たいていの補助金には加点項目なるものがあります。補助金は国や自治体の政策に合う事業者を応援するために支給される資金なので、政策に、より合致した事業を行おうとしている事業者を採択したいと考えています。その1つの判断基準が、各補助金に設定される加点項目です。すなわち、加点項目を満たした事業者が、優先的に採択されます。
加点項目の申請を行うと、どれくらい加点されるかは非公表です。また、種類によっては、申請の手間がそれ程かからないものから、時間をかけて準備するものまで、様々です。まずは加点項目の内容や申請の難易度を確認し、申請までに余裕があれば検討してみましょう。本記事では、ものづくり補助金の加点項目を解説します。
ものづくり補助金では、加点項目は以下の4つに分かれております。
①成長性加点
②政策加点
③災害等加点
④賃上げ加点等
①成長性加点:有効な期間の経営革新計画の承認を取得事業者
成長性加点とは、将来に向けた成長を実現するために経営計画を策定している事業者を指しており、具体的には、有効な期間の「経営革新計画」を策定し都道府県の知事に承認されている事業者を指します。経営革新計画は、事業期間を3~5年間とし、終了時の付加価値額または一人当たりの付加価値額の伸び率と、給与所得額の伸び率が、それぞれ年率平均3%以上、1.5%以上向上していることが必要です。そのような事業計画を立てると、都道府県から「やる気のある中小企業」とみなされ、事業を遂行するにあたって、様々な支援策の恩恵を受けることができます。
これから、新たな商品開発やサービスを始めようとしている事業者様であれば、経営革新計画を申請されることをお勧めします。ただし、ものづくり補助金の加点項目として申請に間に合わせるためには、数か月前には都道府県の窓口に申請をする必要があり
ます。受理されてから申請まで数か月かかりますので、お早めに着手しましょう。
②政策加点
②ー1:「創業・第二創業後間もない事業者(5年以内)」
もし、事業者様が創業から間もない企業であれば、それだけで加点されます。第二創業とは事業承継やM&Aで経営者が変わったことを指します。ただ、設立間もない創業者は申請書類として事業計画書と収支予算書の提出が必要です。こちらも忘れないよう、準備しましょう。
②ー2:パートナーシップ構築宣言を行っている事業者
パートナーシップ構築宣言とは、”サプライチェーンの取引先や価値創造を図る事業者の皆様との連携・共存共栄を進めることで、新たなパートナーシップを構築することを、「発注者」側の立場から企業の代表者の名前で宣言するもの”(引用:パートナーシップ構築宣言ポータルサイト)です。登録すると、ウェブサイトに企業名が公表されます。登録方法ですが、「パートナーシップ構築宣言 ひな形」をダウンロードして、内容を御社の事業形態に合わせて書き換えます。そして、ウェブサイトの申し込みページに必要情報を入力してから、書き換えたファイルをPDF化してアップロードします。内奥に不備等なければ、数日後登録されます。
宣言していない事業者様は、積極的に登録しましょう。内容は難しくありませんし、作業も簡単です。30分程度あれば登録できます。
②ー3:再生事業者に該当する場合
ものづくり補助金における再生事業者とは、中小企業活性化協議会(旧:中小企業再生支援協議会)等から支援を受け、応募申請時において以下のいずれかに該当している事業者を指します。
- 再生計画等を策定中のもの
- 再生計画等を策定済みかつ応募締め切り日からさかのぼって3年以内に再生計画等が成立等したもの
もし、該当していたら申請しましょう。
②ー4:デジタル技術の活用及びDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の取組状況
「デジタル枠」で申請する事業者様であると加点されます。デジタル枠とは、基本要件に加えて、下記の要件を満たしていれば、申請できます。
- DXに資する革新的な製品・サービスの開発、あるいはデジタル技術を活用した生産プロセス・サービスの提供方法に該当する事業である
- 経済産業省のDX推進指標を活用した自己診断を実施し、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)に提出している
- SECURITY ACTIONの宣言を応募申請時点で行っていること
もし、事業計画がDXを活用した生産性向上に関連するものであれば、通常枠ではなくデジタル枠で申請してみてはいかがでしょうか。補助率が2/3に増加します。
③災害等加点:有効な期間の事業継続力強化計画の認定を取得した事業者
事業継続力強化計画とは、”中小企業が自社の災害リスクを認識し、防災・減災対策の第一歩として取り組むために、必要な項目を盛り込んだもので、将来的に行う災害対策などを記載する”(引用:経済産業省)計画書です。近年、地震や台風、浸水による被害が多いですが、そのような災害に見舞われたときに、どのような行動をとるかを計画したものになります。経済産業省のウェブサイトに制度の概要と、詳しい作成方法が記載された「策定の手引き」が公表されていますので、それに従って記載しては、さほど悩むことはないかと思います。また、申請は電子申請と郵送がありますが、電子申請をお勧めします。郵送に比べて、記載不備があっても修正が用意で、承認までの期間が短くなります。ただし、申請してから承認まで数週間要しますので、やはりお早めに作成し申請したほうが良いです。
もし、策定方法がわからなかったら、自治体によってはセミナーやワークショップを開催している場合がありますので、確認することをお勧めいたします。
④賃上げ加点等
④ー1:給与支給総額を年率平均2.0%または3.0%、事業場内の最低賃金が地域別最低賃金より+60円または+90円増加させる計画を作成し、誓約書を提出している事業者
ものづくり補助金は、申請要件として、給与支給総額を年率平均1.5%、事業場内の最低賃金が地域別最低賃金より+30円以上であることが必要となっていますが、申請要件よりも増加額が大きいと加点されます。ただし、事業計画書で増加できる根拠を数値で明確に記載し、かつ誓約書の提出が必要となります。もし、売上や利益が相当に向上する事業計画であれば、ぜひ挑戦することをお勧めいたします。
ただ、従業員数が多い事業者様は、補助金で獲得できる額が、賃上げによって経費となる額より多くなることを確認するよう、お勧めいたします。以前私が相談を受けたケースで、賃上げ額総額が補助金受給額より上回ってしまったため、断念されたお客様がいらっしゃいました。
④ー2:「被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合」
被用者保険の任意適用とは、従業員規模51名~500名の企業が短時間労働者を厚生年金に加入させることを指します。もし取り組む計画があれば、特定適用事業所該当通知書を添付することで加点項目となります。
最大6項目の加点が可能であり、項目によっては準備に時間がかかるもの、かからないもの、そしてそもそも該当しないものがありますが、最低限、パートナーシップ構築宣言と事業継続力強化計画は、申請できるよう準備しておきましょう。この2つは採択を目指すうえで必須です。そして、もし余裕があれば、賃上げ加点も狙える事業計画書を策定してみましょう。