【相談事例】電気自動車部品の加工事業でグリーン成長枠に採択される可能性は?

相談者:
弊社は電気自動車部品の加工事業への進出を検討しており、これがものづくり補助金のグリーン枠に該当するのではないかと検討しています。ただし過去に、事業再構築補助金の通常枠で採択されました。弊社でも活用が可能でしょうか?
回答:中小企業診断士
はい、過去に1度採択された事業者様であっても、グリーン成長枠に申請し採択される可能性はあります。

まず、事業再構築補助金の6次公募から始まった、グリーン成長枠について確認してみましょう。

  1. 申請要件
  2.  補助額と補助率
  3. 過去に支援を受けた事業者が気を付ける点

1. グリーン成長枠の申請要件

申請要件は6つです。それぞれ見ていきましょう。

①【事業再構築要件】「事業再構築」の定義に該当する事業であること

これは、通常枠や他の枠と共通の要件です。事業再構築の定義とは、事業再構築指針の手引きに記載されているもので、事業再構築の5つの類型(新分野展開・事業転換・業種転換・業態転換・事業再編)に対して必要となる要件(製品等の新規性要件、市場の新規性要件など)がそれぞれ決まっております。

グリーン成長枠でも、どの類型で申請するか検討し、その要件について満たしている必要があります。

②【認定支援機関要件】事業計画を認定支援機関と策定すること

これも、通常枠や他の枠と共通の要件です。信頼ができ実績が豊富な認定支援機関を探し、一緒に事業計画を作成しましょう。認定支援機関の選び方については、別記事「認定医戦機関とのかかわり方」をご参照ください。認定支援機関には、「認定支援機関の確認書」を発行してもらう必要があります。

また、補助金額が3,000万円を超える場合、たとえ自己資金で調達しようとしても、金融機関の確認書も必要となります。金融機関が認定支援機関の場合、認定支援機関の確認書で金融機関の確認書を兼ねることができます。金融機関の確認書が必要な場合は、早めに連絡をしましょう。

③【付加価値額要件】補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均5.0%以上、または従業員一人当たりの付加価値額の年率平均5.0%以上増加する事業計画を策定すること

これも、通常枠や他の枠と共通の要件ですが、値が少し厳しくなっています。他の枠では、年率3.0%以上であればよかったのですが、グリーン成長枠では5.0%以上となっております。

付加価値額というのは、営業利益に減価償却費と人件費を足し戻したものです。適切な設備投資と、従業員の賃上げ又は新規雇用を行い、営業活動により売り上げを伸ばすことができれば、目標を達成できる事業計画書を作成することは、それほど困難なことではないかと思います。

④【グリーン成長要件】グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する取り組みであって、その取り組みに関連する2年以上の研究開発・技術開発、または従業員の一定割合以上に対する人材育成を合わせて行うこと

これは、グリーン成長枠独自の要件となります。「実行計画」14分野とは成長が期待される、エネルギー関連産業4分野、輸送・製造関連産業7分野、家庭・オフィス関連産業3分野からなっている計画を指します。経済産業省が策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」で、各分野ごとに「現状と課題」としてある「課題」の解決に資する取り組みであることが重要です。資料から、関連する分野と、具体的な課題を引用し、事業計画書に明確に記載する必要があります。

そして、研究開発・技術開発、あるいは人材育成の遂行が要件となっています。具体的には、研究開発・技術開発計画書、あるいは人材育成計画書の提出が求められています。様式はそれぞれ、事業再構築補助金のウェブサイトから入手できます。

研究開発・技術開発計画は、補助事業実施期間終了までに開始をし、2年以上の期間を要する必要があります。また、人材育成については、従業員の10%以上が年間20時間以上の外部研修か、専門家を招いたOJT研修を受けることが必要となります。提出する計画書はどちらかでよいので、様式に記載してある項目に沿って、5ページ程度で記載するようにしましょう。

⑤【別事業要件】すでに事業再構築補助金で取り組んでいる、または取り組む予定の補助事業とは異なる事業要件であること

これも、グリーン成長枠独自の要件となりますが、過去に事業再構築補助金による支援を受けたことがない事業にとっては、特に示す必要はないかと思います。すでに過去1度支援を受けている事業者様は、その計画書で取り組んだ事業再構築とは異なる事業内容で取り組むことを説明する必要があります。

過去の事業では、○○市場を想定した○○の製品開発に関する取り組みであったが、今回の事業では、××市場を想定した××のサービスに取り組む点が異なるなど、事業再構築の要件ごとに比較して示すとわかりやすいでしょう。具体的には、別事業要件および能力評価要件の説明書の、別事業要件に関する記載が必要となります。

⑥【能力評価要件】既存の事業再構築を行いながら新たに取り組む事業再構築を行うだけの体制や資金力があること

これも、グリーン成長枠独自の要件となりますが、別事業要件と同様、過去に事業再構築補助金による支援を受けたことがない事業にとっては、特に示す必要はありません。

すでに過去1度支援を受けている事業者様は、相応の人員・資金を事業計画遂行に費やしているはずですが、それでも、あたらに取り組む余裕があるということを示さなくてはなりません。

例えば、人員であれば、事業の実施体制は別プロジェクトで組む、新規雇用などによって人員を補充するなどを検討することが必要となります。資金であれば、今回の設備投資による資金繰りに問題ないことや、事業計画中にキャッシュアウトになるリスクが小さいなど、示すことが必要なるかと思います。具体的には、別事業要件および能力評価要件の説明書の、能力評価要件に関する記載が必要となります。

2. グリーン成長枠の補助額と補助率

補助額は、中小企業であれば最大1億円、補助率は1/2となっております。

これは、多くの事業者が検討する通常枠と比べても大きな額となっております。また、従業員数の要件がないので、例えば20名以下の中小企業であっても、上限額2,000万円と比べて額が大きくなっていますので、事業を遂行する実施体制が整っていれば、大きな機会になります。

ただし、補助率は通常枠の2/3と比較して小さい(ただし、6,000万円を超える部分は1/2)ので、設備投資額と比較して検討しましょう。

また、対象経費は通常枠と共通です。

3. 過去に支援を受けた事業者が気を付ける点

申請にあたって気を付けるべき点は、2点あると思います。

①別事業要件・能力評価要件を満たす根拠を明確にする必要がある

1で述べた通り、過去に採択された事業者は、今回初めての採択を目指す事業者と比べて、提出すべき資料が多くなります。

2ページ程度で書くことが要求されていますので、簡潔に根拠をわかりやすくまとめる必要があります。

②一定の減点がある

今回初めて採択を目指す事業者と比較して、採択へのハードルは上がり不利になります。一発で採択される可能性が低くなることを見込み、事前着手申請を必ず行っておきましょう。

第8回までチャンスがありますので、もし不採択になって再チャレンジすることで、本来の目的である事業開始が遅れてしまうと、ビジネスチャンスを逃してしまい本末転倒です。

したがって、御社が、例えば過去の事業再構築補助金で、半導体製造装置の部品加工事業に展開する計画で採択されたが、今回は電気事業者の部品加工事業に取り組むということであり、研究開発・技術開発計画あるいは人材育成計画を立案し、かつ別事業要件・能力評価要件を満たす根拠が明確に記載されていれば、申請要件を満たしており、採択される可能性はあると判断できます。

もし、グリーン成長枠に関心がありましたら、ぜひ当社に一度ご相談ください。

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