金属加工製造業を営む中小企業です。新分野展開のため、事業再構築補助金の活用を想定しております。工作機械を導入したいのですが金額が高額で、現状では一括で経費を支払うことにリスクがあると考えていましたが、設備代理店からリースの活用を持ち掛けられました。公募要領を見たところ、リースでの経費計上は補助対象になるようですが、申請や実績報告の際に気を付けるべき点を教えてください。
はい。事業再構築補助金では、第6回公募から機械装置・システム構築費がリース料も対象となりました。ただ、リースと似た概念として「レンタル」もあります。また、リースにも種類があり、対象となるのは「ファイナンスリース」となります。詳しく見ていきましょう。
リースとレンタルの違い
公募要領の対象経費の区分の、「機械・システム構築費」の項目を参照頂くと、下記の記載があります。
”②専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システム等の購入・構築、借用に要する経費”
したがって、借用(リース・レンタル)に要する経費は、補助対象経費として計上可能ですが、続いて下記の注意書きもあります。
”「借用」とは、いわゆるリース・レンタルをいい、交付決定後に契約したことが確認できるもので、補助事業実施期間中に要する経費のみとなります。したがって、契約期間が補助事業実施期間を超える場合の補助対象経費は、按分等の方式により算出された当該補助事業実施期間分が対象となります。
ただし、リースについては、中小企業等がリース会社に支払うリース料から補助金相当分が減額されることなどを条件に、中小企業等とリース会社が共同申請をする場合には、機械装置又はシステムの購入費用について、リース会社を対象に補助金を交付することが可能です。”
つまり、「借用に要する経費」としてリースとレンタルがあり、どちらも補助対象経費として認められているのですが、経費として計上できる期間が異なります。リースであればリース契約する全期間にわたって対象とできるのに対し、レンタルでは補助事業実施期間(通常枠の場合、交付決定後から最大で12か月)のみとなります。
まず、契約しようとしている設備がリースなのかレンタルなのか、確認しておきましょう。
なお、リースとレンタルの違いとしては、リースは事業者が希望する設備をリース会社がメーカーから購入して貸し出すものに対し、レンタルはレンタル会社が所有する設備を事業者が選ぶというものになります。
また、リースの場合、中途解約は原則的に不可であるのに対して、レンタルは中途解約が可能になります。共通点としては、設備の所有権はリース会社、あるいはレンタル会社にあり、事業者にはありません。
リース特有の条件に注意
さて、導入する設備がリース契約であることが確認できた場合、補助対象となる可能性がありますが、さらに下記の点に注意が必要です。
- 対象となるリース取引は、ファイナンスリース取引のみです
- リース会社と共同申請することが必要となります
- 補助金はリース会社に支払われます
1.対象となるリース取引は、ファイナンスリース取引のみ
公益社団法人リース事業協会によると、リースは「ファイナンスリース」と「オペレーティングリース」に分かれます。
ファイナンスリースとは、中途解約ができず、フルペイアウト(リース会社がかけたコストのほぼ全額をリース料として支払う)のリースをいいます。オペレーティングリースとは、ファイナンスリース以外のリースを指します。なお、ファイナンスリースは、リース期間後に設備の所有権が事業者に移る「所有権移転ファイナンスリース」と、移らない「所有権移転外ファイナンスリース」の2種類ありますが、ほとんどは所有権移転がないリースのようです。
また、リースやレンタルと同じように比較されるものに、割賦というものがあります。これは、分割払いで設備を購入することを指し、支払い完了後に設備の所有権は事業者に移ります。
2.リース会社と共同申請することが必要
事業再構築補助金の申請にあたっては、リース会社と共同申請をするという形式をとります。具体的には、公募申請時には下記の書類の提出が必要です。
- (公社)リース事業協会が確認した「リース料軽減計算書」
- 適切なリース取引を行うことについての誓約書(リース取引に係る宣誓書)
「リース料軽減計算書」というものは、”中小企業等がリース会社に支払うリース料から補助金相当分が減額されていることが確認できる証憑”です。リース会社がリース事業協会に依頼して作成するものです。作成は、おそらく1週間以上かかる見込みですので、早めに依頼してもらいましょう。
リース取引に係る宣誓書は、事業再構築補助金のウェブサイトからダウンロードできます。リース会社の押印が必要ですので、こちらもリース会社に依頼しましょう。
また、交付申請時には、下記の書類が必要です。
- リース会社が発行する見積書と相見積書
- 共同申請のリース会社が作成した、共同申請にかかる確認書<参考様式25>
事業者は、リース会社から本見積と相見積もりを取得する必要があります。これは、通常の取引と同じです。ほとんどの場合、単価が50万円以上となりますので、相見積を取得しましょう。
また、共同申請にかかる確認書の提出(参考様式25)が必要です。リース会社に依頼して作成してもらいましょう。
なお、実績報告時には、交付決定額が1,000万円を超える場合、保険または共済への加入が必要です。取得価額に対して付保割合が30%以上で、火災・水災・風災に対する保険を導入設備にかける必要があります。ただし、リース会社がかけていることが多いと思いますので、確認してみましょう。
なお、「リース会社との共同申請」とありますが、これは、「複数の事業者が連携して事業に取り組む」場合とは異なります。本件に該当する前者は、リース会社に整備を購入してもらい事業者が利用するための共同申請であり、事業は申請する事業者1社が行います。
後者は、複数の事業者が連携体を構成してともに補助事業に取り組む事業計画を策定するものであり、一般的にリース会社は関与しません。
3.補助金の支払いはリース会社へ
補助金はリース会社に支払われ、中小企業がリース会社に支払うリース料が補助金相当分だけ減額されます。リース会社は、事業者に代わって機械設備をメーカーから買い、それを事業者に貸し出すビジネスモデルです。
事業再構築補助金では、リース会社が設備取得価額に対して補助率をかけた金額が補助金額となり、それがリース会社に支払われます。
例えば、リース会社が3,000万円の工作機械を購入し、事業者である中小企業の補助率が2/3であった場合、補助金額は2,000万円ですが、それが事業者ではなくリース会社に支払われます。リース会社は、補助金額を控除したリース料で事業者に設備を貸し出します。
事業者は、リース料が割安となりますが、補助金が支払われることにはならないので注意しましょう。