【相談事例】補助金を使いたいんですが、初めてなもので何から取り組めばよいかわかりません

相談者:始めて補助金を申請する事業者
弊社は豆腐やしらたきの製造販売を行う食品製造業です。機械代理店から、ものづくり補助金を使えば、購入予定の設備に対して補助金が出ることを教えてもらいました。ただ、これまで補助金を使ったことがありません。何から取り組めばよいでしょうか。

回答:中小企業診断士

設備投資に人気のある「ものづくり補助金」を使ってご説明いたします。補助金の申請に挑戦しようと思ったら、まずは補助金に関する基本的知識を身につけましょう。知っておくべきことは3つあります。

①補助金の特性
②補助金申請の流れ
③用意すべき書類

です。

①補助金の特性としては、そもそも「補助金」とはなにかを正しく認識しておく必要があります。そして、対象とする補助金の目的、補助額や補助率、補助対象経費、補助事業実施期間など、公募要領と呼ばれる対象とする補助金の概要が記載されている、数十ページの書類に目を通すことで得られる情報も把握することが必要です。ただ、専門用語が多く使われることもあり、日ごろから補助金に精通していないとなかなか理解することはできません。また、挑戦しようと思っている事業内容がそもそも対象となっているのかどうかも、判断する必要があります。

②補助金申請の流れとして、申請から受給までには多くの事務作業が発生します。そして、補助金は後払いなので、先に経費の支出が発生します。それに備えて資金計画もきちんと立案しておくことが求められますし、導入する設備の納期なども把握しておくことが必要となります。補助事業期間と呼ばれる期間内に発注から納品、報告まで行う必要があるので、流れを把握しスケジュール管理を行う必要があります。

③用意すべき書類ですが、例えば公募申請、交付申請、遂行状況報告(中間報告)、実績報告、事業化状況報告、とよばれる5つのタイミングで用意・提出する書類が決まっています。また、自社で用意する書類の他に、業者から取り寄せる見積書や、税理士から入手する決算書類、経済産業省などの所管に申請し承認が必要な加点書類など、複数の関係者から様々な書類を取り寄せなければなりません。

ではそれぞれについてもう少し詳しく、説明していきましょう。

①補助金の特性

まず、補助金は国が定めた「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」に基づいた制度です。補助金の原資は我々が納めた税金なので、目的に合った適切な使われ方がされるよう、申請手順や交付要件、違反したときの罰則などが細かく定められております。

特に、新型コロナウイルス感染症が広まった際に支給された持続化給付金では、簡便な申請で速やかに支給された反面、不正受給が問題になり逮捕者も出ました。

また近年、補助金制度が拡充したことに伴い公募回数も増加したことから、補助金申請をサービスとするコンサルタントが増加しました。

補助金制度を知らないにわかな補助金コンサルタントが、補助金を多めに不正に申請しキックバックを提案することも報告されています。また支給要件を満たしていないと判断されると、せっかく採択されたのに補助金が下りないこともあります。

次に、補助金は補助率と補助額、および補助対象となる経費が定められています。

まず補助対象となる経費ですが、これはこれから取り組もうと思っている事業に「専ら使用する」ために必要な経費となります。

すなわち、汎用性が認められるパソコンやプリンタ、車などは経費として認められないことがありますので注意しましょう。次に、補助金は対象経費が全額下りることは少なく、割合と上限額が決まっています。それが、補助率と補助額です。

ものづくり補助金14次公募の場合は従業員数や規模によって変わってきますが、例えば10名の従業員をかかえる製造業の場合、通常枠で申請すると、補助率は2/3で上限額は750万円となります。

通常枠の他にデジタル枠やグリーン枠など、事業内容が特定の枠の要件を満たすようであれば、通常枠と比べて補助率や補助額が変わることがあります。

そして、補助金は後払いです。発注や納品後に作成する実績報告書と呼ばれる報告書を提出したのち、補助金が振り込まれます。

また、補助金は「返さなくてもよい資金」として認識されていますが、利益がある程度出ると補助金交付額を上限として国庫に返納する必要もあります。

補助金を申請するときは、正しい知識を持って手続きを進めましょう。

②補助金の流れ

補助金は、申請してから受給するまでの流れがあります。

この流れに従って手続きを進めないと、補助金が支給されなくなる恐れもあります。弊社では、補助金申請のタイミングを「補助金申請5つの壁」と呼んでいます。

5つの壁とは、公募申請、交付申請、遂行状況報告、実績報告、事業化状況報告です。

1つ目の壁:公募申請

公募申請とは、その補助金を申請するための最初の申請作業となります。

採択を左右する事業計画書の作成のほか、決算書や見積書、労働者名簿や加点項目書類などを用意し、電子申請にて申請を行います。

電子申請にはgBizと呼ばれる電子申請用のIDとパスワードが必要となります。発行までに数週間必要で、これがないと申請すらできないので必ず準備しておきましょう。

また、gBizにはプライムとエントリーと呼ばれる2種類のIDがあります。申請で必要なものはプライムとなりますので、間違えないようにしましょう。

なお、事業計画書は審査基準となる審査項目を満たした事業で優れているものから採択されます。

申請要件を満たしていればすべて採択される助成金とは異なります。なお、事業計画書は専門家と一緒に作成することが一般的となっています。

2つ目の壁:交付申請

公募申請後、無事に採択されたら待っている次の壁は交付申請です。

採択されてすぐに補助金が下りたり発注が可能になるかけではありません。公募申請時に申請した経費が妥当かどうか審査されます。

例えば、価格の妥当性を検証するために相見積書が必要となる場合があります。

交付申請から決定まで1か月程度かかることが多いです。交付決定後にようやく発注が認められ、「補助事業」の開始となります。

なお、「補助事業」とは本格的に売上を目指す「事業化」をする前の取り組み内容を表しております。

すなわち、実績報告までを補助事業期間といい、その間に設備を導入し、納品、試運転、効果の確認や検収を行います。

補助事業が完了したのち、満を持して売上や利益を稼いでいく事業化に取り組むことになります。

3つ目の壁:遂行状況報告

3つ目の壁である遂行状況報告は、経費の執行状況や補助事業の進行具合を報告するものです。補助金によってはないものもあります。

4つ目の壁:実績報告

4つ目の壁である実績報告は、見積書や注文書、請求書などの経理書類をまとめ、補助事業で取り組んだ内容をまとめる実績報告書の提出となります。

この4つ目の壁が、私は一番大変だと思います。

なぜならば、経理書類がそろえられないために弊社に相談に来る事業者様が少なからずいらっしゃるからです。

もし、補助金コンサルタントなどの専門家と一緒に取り組まれているのであれば、かならず実績報告書の作成支援もサービス内容に含まれているかどうか確認してください。

時間と手間がかかる作業ですので、事業者様が単独で行うにはかなりの負担となるでしょう。実績報告書が承認されれば、補助金の入金口座を登録する精算払い請求を行います。

5つ目の壁:事業化状況報告

5つ目の壁は事業化状況報告です。

これは、年1回(補助事業終了年度を初年度として5年回、計6回)の報告で、補助事業で取り組んだ内容がきちんと事業化に結び付いているかどうかを報告するものです。

補助事業による事業化が寄与した事業の売上や利益を計算します。

もし、利益がある一定の水準を超えていると、収益納付といって補助金を国庫に返納することになります。きちんと経費を計上して、適切な利益を申告しましょう。

③用意すべき書類

先の述べた5つの壁で、それぞれ用意して申請すべき書類があります。

中でも一番重要なのは、公募申請時に申請する補助事業の事業計画書でしょう。

事業計画書の内容で審査項目を満たしているかどうか審査されます。審査項目は公募要領に記載されていますが、数値計画を除けば抽象的な内容となっています。

また、申請者が審査項目を満たしていると考えていても、審査者がそうではないと判断すれば不採択になります。以前、不採択になった事業計画書を(弊社のお客様が不採択で不機嫌になってブラッシュアップに対応してくれなかったため)仕方なくほぼそのままの内容で次の公募で申請したところ、採択されたことがあります。

審査によって評価が分かれたか、あるいは2回目の申請では相対的に他の事業者の計画書が劣っていたためか、わかりませんが、人が相対評価するのでそのブレはあると思います。

他にも、決算書や確定申告書、見積書や納品書、請求書なども用意したり、見積依頼書と呼ばれる通常の商習慣では作成しない書類も用意する必要があります。

また、写真撮影、通帳のコピーなども要求されます。要求された書類を期日までに提出し、事務局から修正の依頼があれば真摯に早急に対応することが望まれます。

期限を守らないと、補助金が下りない可能性もありますので、スケジュール管理に気をつけましょう。


以上ご説明した内容は、補助金申請に挑戦するうえで必要な基礎知識です。

事業計画書の内容の高度化に伴い補助金コンサルタントなどの専門家を活用しないと採択が難しくなっていますが、専門家にすべて丸投げすることは危険です。

事業者も当事者意識をもち、主体的に取り組むことが大切です。

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