デジタル枠は、ものづくり補助金10次公募から新設された枠です。
デジタル枠の概要は、
”DX(デジタルトランスフォーメーション)に資する革新的な製品・サービス開発又はデジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資等を支援”
するものです。
補助額は通常枠と同じですが、補助率が2/3と、通常枠の1/2(小規模事業者等を除く)よりも多くなっております。
また、DXがキーワードですが、もしデジタル枠で不採択になっても、通常枠で再審査されます。では、DXを活用した設備・システム投資とは、何でしょうか。デジタル枠の要件にヒントがありますので見ていきましょう。
デジタル枠の要件は3つあります。
(1)DXやデジタル技術を活用した事業であること
具体的には、①DXに資する革新的な製品・サービスの開発、②デジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善、のいずれかを満たしている必要があります。事業計画書にその内容を具体的かつ詳細に記載する必要があります。
では、DXに資する革新的な製品・サービスの開発、あるいはデジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善とは、いったい何を指すのでしょうか。
中小企業庁の資料にその事例が書かれています。
「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業令和3年度補正予算の概要」(中小企業庁)によると、デジタル枠の想定活用事例として、飲食・小売業の事例が紹介されています。
事例
店舗に需要予測システムを導入し、販売機会損失と廃棄量を削減すると同時に、新製品開発と合わせて工場の製造ラインにAIを活用した不良品検知システムを導入、生産性と付加価値の向上を目指す。
対象経費
- AIを活用したシステム構築に要する費用
- 新製品開発のための機械装置に要する費用
- 需要予測システムに係るクラウドサービス利用費
新製品開発のための設備投資を行い生産性と付加価値向上を目指す事業であれば通常枠に相当しますが、AIを活用した不良品検知システムや需要予測システムの導入が、「デジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善」に相当すると判断されるようです。
また、公募要領には、①DXに資する革新的な製品・サービスの開発の例として、AI・IoT、センサー、デジタル技術等を活用した遠隔操作や自動制御、プロセスの可視化等の機能を有する製品・サービスの開発(部品、ソフトウェア開発を含む)等が、②デジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善の例として、AIやロボットシステムの導入によるプロセス改善、複数の店舗や施設にサービスを提供するオペレーションセンターの構築等、など挙げられています。
一方、
“単にデジタル製品の導入やアナログ・物理データの電子化にとどまり、既存の業務フローそのものの見直しを伴わないもの、及び導入先企業において前述の単なる電子化にとどまる製品・サービスの開発は該当しません。”
とあり、単なるデジタル化やIT化はDXの要件にはならないようです。
DXは、デジタルにおけるトランスフォーメーション(変革)とあるように、業務や働き方の変革、ビジネスモデルの転換や修正を伴う変革を伴う事業計画であれば該当するでしょう。
(2)DX推進指標を活用した自己診断の実施とその結果を応募締め切りまで独立行政法人情報処理推進機構(IPA)に対して提出していること
情報処理推進機構の「DX推進指標 自己診断結果入力サイト」に、DX推進指標の説明やそれを活用した自己診断の実施と、具体的な提出方法が記載されています。
事業者が行うこととしては、サイトからDX推進指標に基づいて作成したフォーマットであるエクセルファイルをダウンロードし、自社の現状と3年後の目標を回答します。
回答すべき項目は多いですが、エクセルのドロップダウンリストから指標である数値を選択するだけですので、あまり悩まず回答できるでしょう。
フォーマットへの入力が完了したら、同サイトのリンクから「DX推進ポータル」に移動し、自己診断結果を入力します。
なお、DX推進指標とは、経済産業省が策定した、
”経営者や社内の関係者がデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に向けた現状や課題に対する認識を共有し、アクションにつなげるための気付きの機会を提供するもの”
です。
自己診断結果の提出後は、全体の指標に対する自社の位置づけがわかるようになり、自社のDX化に活用できるものとなっております。
(3)SECURITY ACTIONの「★一つ星」「★★二つ星」のいずれかを宣言を応募申請時点で行っていること
SECURITY ACTIONとは、”中小企業自らが、情報セキュリティ対策に取組むことを自己宣言する制度です。安全・安心なIT社会を実現するために創設”(情報処理機構)されたものです。
取組目標に応じて、「★一つ星」「★★二つ星」のいずれかがあり、「★一つ星」に関しては、中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン付録の「情報セキュリティ5か条」に取組むことを目標とし、「★★二つ星」に関しては、「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」で自社の状況を把握したうえで、情報セキュリティポリシー(基本方針)を定め、外部に公開する必要があります。
いずれも自己宣言ですので認定ではないことに注意しましょう。
デジタル枠の申請を検討しており、SECURITY ACTIONを取得していない場合は、「★一つ星」での自己宣言を目指します。
取組目標が書かれた資料を読み、「自己宣言者サイト」から申し込みフォームに入力し、アカウントを登録します。
登録されたら、受付メールを受信しますので、申し込み手続きを完了します。自己宣言IDが「SECURITY ACTION」宣言手続き後に即時発行されますんで、それを控えておきましょう。公募申請時に入力が必要となります。
また、デジタル枠を申請するのであれば、加点項目も狙うことをお勧めいたします。14次公募から加点項目が増えました。
その内容に関しては別記事でご紹介いたします。