個別受注品の実際原価がわからない工場へ|まず集めるべき3つの数字

個別受注品の実際原価がわからない工場へ|まず集めるべき3つの数字

「見積もりは出しているのに、なぜ粗利が下がっているのか分からない」というご相談

相談者:機械加工業を営んでおり、従業員は30名ほどです。多品種少量生産で、いろいろな取引先からいろいろな部品を受注しています。見積もりを出すときは原価計算をしていますし、現場でも日報をつけています。ただ、最近の経営分析で粗利が下がってきていることに気づきました。見積もりはちゃんと出しているつもりなのに、実際にどれだけコストがかかっているのか、正直よく分かっていません。どこから確認すればいいのでしょうか。

代表(中小企業診断士):ご相談ありがとうございます。実はこのパターン、とても多いです。最初から「原価が分からない」と自覚して相談に来られる会社はむしろ少なくて、粗利の低下という経営分析の結果から、実は原価計算のところに問題があったと分かるケースがほとんどです。今のお話をお聞きする限り、見積もりの原価計算はされていても、「実際にかかった原価(実際原価)」を集計して見積もりと突き合わせる、というところまでは進んでいないのではないかと思います。まずそこから整理していきましょう。

結論:見積価格は「製造原価・販管費・目標利益」の3つに分けて考える

見積価格は、次の3つの要素に分解して考える必要があります。

  • 製造原価…工場でものを作るのにかかったコスト
  • 販管費…会社を運営するためのコスト
  • 目標利益…経営としてどれだけ利益を確保するかという判断

製造原価はさらに「材料費+外注費+製造費」に分かれます。材料費と外注費は伝票を見れば比較的分かりやすいのですが、問題は製造費です。製造費は財務会計でいう労務費と製造経費にあたりますが、実務上は「人の製造費」と「機械の製造費」に分けて、それぞれ「レート×時間」で計算すると考えやすくなります。

多くの会社で粗利が読めなくなっている原因は、この3つの区分が混ざったまま見積もりが出ていることです。人と機械の工数が一緒になってしまっている、利益を感覚で上乗せしている、レートが何年も見直されていない――こうした状態が積み重なると、見積もりの数字はあっても、それが何を根拠にした数字なのか誰も説明できなくなります。まずここを整理することが、実際原価をつかむための出発点になります。

見積もりの中身、実は3つが混ざっていませんか

ヒアリングでは、まずお客様が使っている原価計算シートを見せていただき、この3つの構成がきちんと分かれているかを確認します。同業他社の係数値と比較しながら、今の水準がどのあたりにあるかをお伝えすることもあります。

判断の基準

  • 原価計算シートが「製造原価・販管費・目標利益」の3構成に分かれているか
  • レートが明示されているか、その根拠が説明できるか(何年前の数字をそのまま使っていないか)
  • 材料費・外注費が製品ごとに引き当て(紐付け)できているか

対策・注意点

  • まとめて発注した材料は、使った分だけをその製品に計上する必要があります。まとめ買いした分をどう配分するかで、製品ごとの原価がぶれやすくなります。
  • 複数の製品で共通して使う副資材は、何らかの基準で按分する必要があります。ここを曖昧にしたまま「材料費はだいたいこれくらい」で通してしまうと、実際原価の精度が上がりません。
  • 販管費は現場での実測が難しいため、私たちは決算書上の販管費を製造原価で割った比率を使うことをお勧めしています。ただし年度によって特殊な要因が入ることがあるので、単年ではなく複数年の平均で見てください。この比率は会社ごとに大きく異なるため、まずは自社の決算書の複数年平均で確認することから始めるとよいでしょう。

実際原価をつかむには、まず何を測ればいいのか

製造原価の構造が整理できたら、次は「実際にかかった時間」をどう測るかという話になります。ここで多くの会社が引っかかるのが、日報の粒度です。出来高だけを記録していて、どの作業にどれだけ時間がかかったかが分からない日報は、実際原価の集計には使えません。また、機械の稼働・停止を紙で記録していても、30分単位のようなざっくりした記録では、原価計算に必要な精度には届きません。

実際に、機械の稼働・停止を紙日報で30分単位で記録していた会社に電流センサーを1台取り付けてダッシュボードを見ていただいたところ、「紙の記録と大まかな傾向は合っている」という感覚は持てました。ただ、紙では30分単位でしか分からなかったところが、センサーでは数秒〜1〜2分単位まで細かく見えるようになり、そこで初めて「この工程はここで細かく止まっていたのか」という気づきが生まれました。実際原価の精度は、この細かさの違いがそのまま反映されます。

そこで最初に押さえておきたい数字は、次の3つです。

測る対象 よくある現状 見えてくること
機械の稼働時間 紙日報で30分単位の記録 センサーを使うと数秒〜1〜2分単位で稼働状況が見える
人が機械に触っている時間 ほとんど記録されていない まず「人がいるかいないか」を障害物検知センサーで把握し、必要なら「誰が」をRFIDで特定
レート(人・機械) 古いまま放置されがち 実態の稼働状況に合わせて見直す必要がある

対策・注意点

  • 人に「何時から何時までこの作業をした」と記録させようとすると、現場の反発を招きやすく、記録自体が形骸化しがちです。センサーで自動測定できる部分は自動化した方が、現場の負担も精度も両立しやすくなります。
  • 広げる順番は、機械の稼働時間から始め、次に人の有無、最後に「誰が」を特定する、という段階を踏むのが現実的です。最初から全部を細かく測ろうとすると、現場の抵抗も大きくなります。
  • 導入は、まずは電流センサーをマシニングセンター1台に取り付け、ダッシュボードで稼働状況を見ることから始めてください。費用の目安は5万円程度、ヒアリングから立ち上げ・確認までは2週間以内を目安に進めます。そこで得た肌感をもとに、もっと見たいとなれば台数を広げていく流れをお勧めします。なお、工場にインターネット環境が整っていない場合でも、ポケットWi-Fiのような簡易な回線を用意すれば対応できますので、その点で導入を諦める必要はありません。
  • 機械の台数が少ない会社ほど、市販の生産管理ソフトはコストに対して「台数に見合わない」と判断されがちです。しかし1台からでも稼働状況を見る意味は十分にあります。台数の少なさは導入を見送る理由にはなりません。

まとめ

粗利が下がってきたと感じたときの確認ポイントは、大きく2つに整理できます。1つは、見積価格が「製造原価・販管費・目標利益」の3つに分かれているか、レートの根拠が説明できるか、材料費・外注費が製品ごとにきちんと引き当てられているかという見積構造の点です。もう1つは、機械の稼働時間・人が機械に触っている時間・レートという3つの数字を、実際にどう測るかという実際原価の点です。

見積時に計上した原価と、実際にかかった原価を突き合わせて検証するところまで進んでいる会社はまだ少ないのが実情です。私たちがご支援する場合も、まずは実際原価を正確に取れる状態をつくることを優先しており、突き合わせによる検証はその先の段階だと位置づけています。その過程で、材料費・外注費の引き当て精度や、レートの根拠が古くなっていないか、そして人の時間測定で現場の反発を招かないかといった点は、特に見落としやすいポイントです。

まずは無料相談で、自社の状況を確認してみませんか

原価計算シートの3構成やレートの根拠は、日々の業務に追われる中で、自社だけで見返すと見落としやすいところです。「うちの見積もりはどこまで整理できているのか」「まず機械1台からセンサーを試すべきか」といった判断に不安がある場合は、無料相談で個別に確認することができます。

現場・原価の見える化に関心のある方は、当社のIoT・現場と原価の見える化の柱ページもあわせてご覧ください。無料相談フォームでは、ご相談内容として「現場・原価の見える化(IoT)」をお選びいただくと、状況に合わせたご案内がスムーズです。まずはお気軽にご相談ください。

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